ロームを苦しめる「SiCパワー半導体バブル」の後遺症→世界トップを目指した大勝負から一転、リストラ着手で"過剰投資"の重すぎるツケ

「リストラはやりきる。“生き死に”に関わることだ」
大手半導体メーカーのロームが業績不振にあえいでいる。
自動車や家電などに多く使われるアナログ・パワー半導体を手がけるロームは、2024年度に過去最大の400億円を超える営業赤字を計上した。今年4月には社長交代が行われ、それまでの拡大路線から一転、人員や工場のリストラを余儀なくされている。
AIバブルに湧く半導体業界。その一方で、不振にあえぐロームが浮き彫りにしたのは、コロナ禍をきっかけとした「半導体バブル」に踊らされた半導体メーカーが、その“ツケ”に苦しむ姿だ(関連記事はこちら)。
堅実メーカーの大勝負
ロームの急激な業績悪化の要因は、ひと言でいえば「過剰投資」だ。東克己社長は「『ちょっとやりすぎ』感と経営判断の遅れ」と表現する。
2020年度までは年間400億〜500億円程度で推移していた設備投資額は、2021年度以降に急増。2023年度のピーク時には1800億円超と、売上高比で40%に迫る水準にまで膨張していった。
投資のターゲットにしたのが「SiC(炭化ケイ素)パワー半導体」の増産だ。材料にシリコンを使う従来型のパワー半導体に比べて高い電圧にも耐えられ、電力消費も少ない。こうした特徴からEVへの搭載が進んでいる。
「2025年度にSiCで世界シェア30%のトップになる」。2023年にロームは、SiC関連の売上高を年率50%以上ものペースで引き上げる計画をぶち上げ、設備拡大に突き進んだ。

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