黒字なのになぜ現金が足りなくなるのか。次世代リーダーが最初にはまる「成長と資金繰り」の落とし穴
「売上高は伸びている。利益も黒字だ。それなのに、なぜか手元の現金が増えない」
中小企業の経営者や、事業承継を打診された次世代リーダーからよく聞く言葉である。とくに薄利多売型のビジネスモデルでは、この違和感が表面化しやすい。
事業承継の直後、最初に浮上するのが資金繰りの問題だ。黒字であることと資金繰りがうまくいくことは必ずしも一致しない。そのズレが生まれる構造を理解しておかないと判断を誤りやすい。
前回の記事では、架空の会社と人物を用いて「資金・スキル・組織」という3つの壁について整理した。今回はその中でも「スキルの壁」に焦点を当てる。ここでいうスキルとは、専門的な財務・会計知識をどれだけ知っているかではない。会社の状態を数字の羅列ではなく“構造”として読む力である。
「黒字だから資金繰りは何とかなるはず」
老舗印刷会社の次期社長候補として承継の打診を受けた高橋健太(45)も、当初はこう考えていた。「黒字なのだから資金繰りは何とかなるはずだ」と。だが、会社の数字に本格的に目を通し始めたとき、その前提がいかに危ういものかに気づくことになる。
高橋が勤務する印刷会社は、売上高こそ堅調に推移しているものの、本業の儲け具合を示す営業利益率は3%台にとどまっている。典型的な、価格競争が激しい薄利多売型の事業構造だ。
主要な取引先は長年の付き合いがある法人で、価格や支払い条件の交渉力は買い手側のほうが強い。売上高を伸ばそうとするほど売掛金(未回収の代金)が膨らみやすいが、外注費や材料費といった支払いは、売掛金の回収に先立って発生する。



















