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大恐慌時、覇権国が役割を果たせず、国際公共財の供給が停止した/チャールズ P.キンドルバーガー『大不況下の世界 1929-1939』を読む(上)

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『大不況下の世界 1929-1939 改訂増補版』チャールズ P.キンドルバーガー 著
チャールズ P.キンドルバーガー『大不況下の世界 1929-1939 改訂増補版』石崎昭彦、木村一朗 訳/岩波書店

米中の新冷戦の始まりは、第1期トランプ政権がスタートした2017年ごろだ。トランプ大統領の気まぐれで対中強硬策が始まったわけではない。リーマンショックにより米経済が大きく疲弊した頃から、中国は経済規模の拡大を背景に、軍事的、領土的な野心を隠さなくなっていた。

17年に話題となった概念

ビジネスに効く名著のエッセンスを識者がコンパクトに解説する。【原則土曜日更新】

そんな17年に話題となったのが、安全保障を研究するグレアム・アリソンが『米中戦争前夜』で用いた「トゥキディデスの罠」という概念だ。これは、覇権国家と新興国家が、戦争が不可避なまでに衝突する現象を指す。

古代アテネの歴史家トゥキディデスは、覇権国スパルタと新興の大国アテネの覇権争いを「ペロポネソス戦史」に記録した。アリソンはその論考を基に、過去500年について、覇権国と新興大国との間に緊張が生じた16のエピソードを探る。戦争を回避できたのは4ケースにすぎなかった。

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