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中国に対抗すべく日米が造船業の「復活」へ注力。追い風に歓迎ムードが広がる一方で、海運業への打撃懸念など「落とし穴」にも注意

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中国への対抗もあり、日米で造船業強化策が進められているが、産業へのリスクもある。

アメリカは衰退した造船業を大復興させようとしている (写真:Kriston Jae Bethel/The New York Times)

日本の経済界の中で、造船業への注目が集まっている。背景には、中国造船業の世界シェアの急速な拡大に対し、アメリカ国内で安全保障上の懸念が高まっていることがある。

10月28日に行われた高市早苗首相とトランプ大統領との首脳会談で、日米両政府は両国の造船業における生産能力強化のため協力するという覚書を交わした。「日米造船作業部会」を設けて具体的な取り組みを進めるほか、アメリカの海事産業への日本からの投資促進を盛り込んだものだ。

造船業への追い風には落とし穴も

これに先立って自民党は関係議員を集めた会合を開いた。造船業を日本の安全保障や危機管理の基盤であるとともに将来の成長産業と位置づけ、政府主導で1兆円規模の投資を可能とする基金の設立を議論したという。これらの動きと呼応するように、今治造船など国内17社でつくる業界団体が近く3500億円の設備投資を行う予定だと報じられた。中国に日米両政府に加えて民間企業が協力して対抗する状況が進みつつある。

そもそも、造船業は産業政策の影響を受けやすい。第2次世界大戦後、日本は鉄鋼や石油化学、自動車などの重工業と並んで造船業振興へ国家を挙げて取り組み、世界有数の船舶生産国となった。その後1980年代になると韓国の造船会社が政府の大規模な支援を受けて急成長した。韓国政府は、造船施設への直接投資に加え、低金利融資や政府債務保証など様々な形で支援を行った。

さらに2000年代に中国が造船業を戦略産業の1つに位置づけると、あっという間に日本と韓国を抜き去り、生産高で世界トップとなった。中国で製造された船舶の世界シェアは00年には10%に満たなかったが、その10年後には約5割に達している。

日本の経済界では、高市政権下での「日米蜜月」を背景に、造船業の追い風を歓迎する声が強い。しかし、そこにはいくつかの警戒すべき落とし穴がある。

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