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小泉農相がXで集計値をフライング公表、「トランプ大統領は全部自分で出している」と正当化...「スピード重視」掲げた備蓄米放出は法秩序を軽視

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備蓄米を試食する小泉農林水産大臣
2〜4年前産の備蓄米放出を打ち出し、「どれもおいしい」とアピール(写真:ロイター/アフロ)

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「私は出していいと思います。トランプ大統領を見てください。トランプ大統領、全部自分で出していませんか」――。

7月22日、小泉進次郎農林水産相が記者会見でこう述べたとき、筆者は耳を疑った。なぜなら筆者は「GDP統計の結果を内閣総理大臣がX(旧ツイッター)で出しますか、消費者物価指数を先んじて総務大臣が公表しますか」と問うていたからだ。

なぜ、そのようなやりとりになったのか。

7月18日、農林水産省は水田における作付け意向をとりまとめ、公表した。コメの需給を見通す上で重要なデータだ。ところが、その4日前の7月14日、小泉農相は秋にとれる主食用米が前年(679万トン)より56万トン増える見込みという作付け意向の集計値をXの個人アカウントで“速報”したのだ。

情報アクセスの公平性とは

昨年来の「令和の米騒動」では、流通段階でコメの不足感が高まり取引価格が高騰した末、小泉農相が5月、無制限の備蓄米放出に踏み切ると一転、価格が急落した。

そのような状況ゆえに、先々の作付け意向には「皆、非常に敏感になっている」と米流通会社の幹部は話す。需給見通しを左右するため、足元の取引に影響するからだ。昨年8月に始まった米先物取引にも影響しうる材料で、Xでのフライング公表は著しく公平性を欠く。

記者会見でこの点を確認したところ、小泉農相からは「公平性の問題があるというのがよくわからない。誰でもXを見られる」との答えが返ってきたため、筆者が例えとして出したのがGDPや消費者物価指数だった。

経済統計はマーケットの判断材料となるものだ。GDPや消費者物価指数をはじめ政府の基幹統計は、事前に示された公表日時に公式サイトにアップされている。2022年来の円安局面では、アメリカの雇用統計や物価統計で為替相場が大きく変動したことが象徴的だが、日本でもGDPや日銀短観で株価が動く。

作付け意向調査は基幹統計ではなく、行政遂行上、行われているものとはいえ、重要性を鑑みれば、同様の扱いがなされてしかるべきだろう。

なぜ小泉農相はトランプ大統領を例に引いたのか。

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