有料会員限定

「令和の米騒動」はなぜ起きた?槍玉に挙がった米卸トップが語る価格急騰の根深い背景。国が「備蓄米を出すかも」と昨秋に言っていれば...

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小

コメは1年1作で、米卸は秋に収穫されたコメを仕入れ、翌年の新米が出る頃にかけて売っていく。小売店や中食・外食業者といった販売先・販売量も毎年それほど大きくはぶれない。

米卸の使命は1年を通じてコメをなるべく安定的に供給することだ。穫れ秋の段階で相場に先安感があれば仕入れをなるべく少なくし、先高感があれば仕入れ契約を厚くしておく。

2024年産は確実に足りなくなると思い、米卸は厚めに仕入れようとした。だが米卸の主な仕入れ先である全農(全国農業協同組合連合会)の集荷量が例年の7割程度に減ることが見えていた。

その中でなんとか取引先への供給を途切れさせないという使命感からコメを集めようとして争奪が始まった。

――米卸悪玉論もあります。

われわれ米卸は相場で売買して利ザヤ稼ぎをするわけではない。純然たる仕入れだ。厚めに仕入れようとしたのは、後悔があったからだ。2024年夏にコメが足りなくなり、取引先から「米卸に売るコメが無くてどうするのだ」と叱られた。

備蓄米がなかなか出回らなかった理由

――コメが足りない状況はいつから始まったのですか。

スタート地点は2022年秋に収穫されたコメだ。翌年秋を前にして在庫が非常に少なくなっていた。通常、新米が出回ると店頭のコメは前年産から順に切り替わっていくが、2023年秋は早めに新米に切り替わった。

この2023年産の品質があまりよくなかった。玄米から精米する時に割れたりして量が減る。業界内では「このままでは2024年の夏場にコメが足りず大変なことになる」と見通しが立ち、早くも7月には量販店の棚からコメが消え始めた。

そこに8月、南海トラフ地震の地震臨時情報が出て家庭内の備蓄が進み、一気に小売店の棚からなくなった。お盆明けに徐々に新米が出回ると一気に棚に並び、先食いが進んだ。2025年の端境期まで持たないことは明らかだった。

――農水省は3月以降、備蓄米を競争入札で全農をはじめとする集荷業者に放出しましたが、店頭になかなか出回らないことが問題視されました。

次ページ再び起こるに違いない「米卸悪玉論」
関連記事
トピックボードAD