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〈現地ルポ〉ボクシングをする身軽なヒト型ロボット、ハンズフリーで決済できるスマートグラス…中国「最先端テック企業」の現在地

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ヒト型ロボットを開発するスタートアップの宇樹科技(記者撮影)

トランプ関税など大統領による数々の政策で信頼を失うアメリカを尻目に、世界で存在感を高めているのが中国だ。

「関税戦争に勝者なし」「弱肉強食に戻ってはいけない」などとアメリカ批判を展開しながらEUやASEAN、アフリカ諸国との関係強化に動く。透けて見えるのは、アメリカ抜きの国際秩序を牽引しようとする意思だ。

6月下旬、駐日中国大使館と中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ)アジア・アフリカ地域言語番組センターは、日本のメディア向けに浙江省杭州市のプレスツアーを組んだ。筆者を含む日本のマスコミ複数社の記者が参加した。

杭州市は中国IT大手の阿里巴巴集団(アリババグループ)や、1月にアメリカのオープンAIと同レベルの生成AIモデル「DeepSeek」を公開して世界を震撼させた深度求索(ディープシーク)が生まれるなど、中国の科技創新(テックイノベーション)を牽引する地だ。プレスツアーで中国側が日本のメディアに紹介したのも、技術革新をリードする名だたる企業たちだった。

グローブとヘッドギアを装着したロボットがキックボクシングを披露した(記者撮影)

筆頭は、ヒト型ロボットを開発するスタートアップの宇樹科技(Unitree)だ。宇樹科技といえば今年1月、春節(旧正月)を祝うテレビ番組で、隊列を組んだ16台のロボットが人間と一緒に披露したダンスが話題を呼んだ。

景気低迷にあえぐ中国でヒト型ロボットは明るい話題だ。4月には北京市で開かれたハーフマラソンで約20チームのロボットが出走している。

報道陣を前に、グローブとヘッドギアを装着した2体のロボットが披露してみせたのはキックボクシング。互いに間合いを測りながらパンチとキックを繰り出す。1体のロボットが勢い余って前のめりに倒れると、手をつき、ひざを曲げながら腰を上げ、立ち上がった。人間が転んだときに立ち上がる動作と重なる。

歩行の安定性は世界トップクラス

高さ130センチメートル、重さ35キログラムのロボット「G1」は、歩行の安定性で世界トップクラスと評される。スタッフが後ろからドンと押してみせると、よろめきながらも持ちこたえた。AIの深層学習を活用した制御が効いているのだ。

ロボット同士のキックボクシングの様子 (記者撮影)

そのG1もまだ開発途上だ。マーケティング担当者は、「3カ月前はここまで滑らかな動きはできなかった」と語る。開発のスピードが速いのは、提供先の企業に二次開発を委ねているからだ。

価格も抑えている。ヒト型ロボットの製造コストは一般に数千万円とされるが、G1は研究開発向けの販売価格を1000万円以下に圧縮。二次開発できない廉価版は200万円台だ。

これまでにアメリカのアップルやグーグル、エヌビディアなどが宇樹科技のロボットを研究開発目的で導入してきた。「宇樹科技1社でできることは限られる。各企業に二次開発を進めてもらい、ヒト型ロボット業界全体を盛り立てていきたい」(担当者)という。

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