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【ルポ】同姓強制社会が夫婦に強いる過酷な現実…40代と70代の男性を苦しめた「家族の抵抗」、50代女性が事実婚にこだわる「嫁の役割」

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国が義務づける夫婦同姓制度に、悩み苦しんできた人は少なくない。写真はイメージ(撮影:今井康一)

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家族が同じ姓を名乗ることで、家族の一体感が生まれる――。国や保守派が理想とする家族観。しかしその陰では、夫婦同姓を強制されるがゆえに翻弄され、苦悩に直面する夫婦が存在する。

「自分が改姓する決断はできなかった」(40代男性)

「配偶者に改姓を強いたことは今でも申し訳なく感じます」。首都圏の会社で働くサイトウケンイチさん(40代男性、以下すべて仮名)は、結婚した15年前を振り返り、そう漏らす。

どちらが改姓するか、プロポーズをするまで妻と話したことはなかった。「改姓について深く考えず、妻は姓にこだわらないと勝手に思い込んでいました」。

ただ、妻は生まれ持った氏名で仕事のキャリアを築き、その氏名で出した著作物もある。婚約直後は改姓を受け入れる様子だった妻も、改姓によるデメリットや名前への愛着について、徐々に言葉にするようになった。どちらが改姓するのか。2人で何度も話し合ったが、結論は出なかった。

改姓は子どもを売りに出す感覚

結婚後に新しい仕事を始める予定だったケンイチさんにとって、改姓による仕事上のデメリットは多くなかった。だが周りの目は気になった。ケンイチさんは地方出身。男性であるケンイチさんが改姓したと知れば、周囲は詮索するだろう。

「将来地元に戻る可能性も考えると、“普通でない人”とレッテルを貼られるのは避けたい気持ちがありました」。事実婚は、法的保護を受けられないことや、堂々と『結婚した』と言いにくいことから、選択肢にはなかった。

決定打となったのは父親の思いを打ち明けられたことだった。

ある日、父親は「息子が改姓するということは、お金がなくて子どもを売りに出すような感覚だ。ケンイチにそのつもりはないんだよな」と確認してきた。聞くと、実際に昔はそういうことがあったという。「衝撃を受けましたが、父の思いも理解はできました」。

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