〈詳報記事〉2026年ワールドカップ放映権。FIFAによる"電通外し"から一転、博報堂との交渉難航で電通が急接近の舞台裏

4年に一度、国際サッカー連盟(FIFA)が開催する「FIFAワールドカップ」。来年6月11日の開幕戦まで1年を切ったが、こと日本においては放映権をめぐり混迷を深めている。
パラグアイのアスンシオンで5月15日、FIFA総会が開催された。日本から飛行機で移動すると、ゆうに32時間は要する南米の地に電通社員の姿があった。「ワールドカップの放映権獲得に向けて、電通がFIFA総会へ人を送り込んできた」(業界関係者)。
時計の針を、さらに3月へ戻そう。アメリカのダラスでFIFAが開催した、2026年大会に向けた放映権ビジネスのワークショップ。日本からはNHKと博報堂が参加したが、このときは電通の参加がかなわなかった。FIFAは博報堂を日本における放映権のパートナーにするべく、“電通外し”に動いたためだ(詳しくはこちら)。
FIFAと博報堂との独占交渉は5月に大詰めを迎えるかと思われたが、7月半ばになっても結論が出ていない。いったい何が起きているのか。
電通とFIFAの長く深い関係
東洋経済がFIFAに取材したところ、「FIFAと博報堂との独占交渉は終了し、博報堂との継続的な協議に加え、新たなメディアパートナーとの交渉を開始した」とのコメントを得た。
新たな交渉先は明らかにしないものの、博報堂との独占交渉が5月末に終了してから「電通がFIFAに直接、交渉したいと申し出て巻き返しを図っている」と前出の業界関係者は指摘する。パラグアイにまで来てくれた電通を、FIFAもむげに扱うわけにはいかない。両者の関係は長く深いからなおさらだ。
日本の男子ワールドカップ放映は、長年にわたり電通の独壇場だった。だが2026年大会に向けてFIFAは、「放送パートナーシップの締結では、従来のサッカーファンと、デジタルでスポーツを楽しむファンの両方が視聴できることを目指している」と方針を転換。
放送局とつながりの深い電通でなく、博報堂を新たなパートナーに選んだのは、デジタル対応を進める狙いがあった。「日本で幅広い視聴者にリーチするためには地上波無料放送が不可欠だが、同時に若年層をひきつけるための新たな収益モデルや、動画配信サービスとの革新的なパートナーシップも検討したい」(FIFA)。