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生物多様性の回復を目指す「ネイチャーポジティブ」がビジネスの世界で注目されている。ネイチャーポジティブの達成には、「生態系の広がり」「生態系の状態」「種の絶滅リスク」の3つを改善する必要がある。
2020年を基準年として、それらの減少・劣化が2030年までに反転し、2050年には完全に回復することを目指し、取り組みが進められている。この連載では、ネイチャーポジティブの動向についてご紹介していく。
第5回目はネイチャーポジティブ時代の金融機関の役割について解説する。
ネイチャーポジティブ経済への移行に投資機会
これまで説明してきたようにネイチャーポジティブとは、生物多様性の損失を反転させ、自然の回復を目指す概念だ。この実現には金融機関の役割が重要となる。
世界経済フォーラムが2020年に発表した報告書では、生物多様性の損失が気候変動と並ぶ深刻な危機として認識され、世界のGDP(国内総生産)の半分(約44兆ドル)以上が自然の喪失によって潜在的に脅かされていることが指摘された。
一方で、ネイチャーポジティブ経済への投資と移行で、2030年までに約3億9500万人の雇用創出と年間約1150兆円規模のビジネスチャンスが見込めるとされている 。
このような大きな経済活動の変革には、民間資金の活用が不可欠だ。とくに金融機関には、適切な投融資で企業をネイチャーポジティブに向けた道筋に導く役目がある。一方、適切でない投融資を行うと、森林破壊や水産資源の不適切な管理などを助長し、後により悪化した自然環境を回復させるために今より大きな努力とコストが必要となる。そのため、金融機関がどのような事業に資金を提供するかが、ネイチャーポジティブ実現の可能性を左右するといってもよい。
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