2050年のネットゼロ達成にも不可欠となる森林破壊ゼロ。今こそ知っておきたい「ネイチャーポジティブ」②

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生物多様性の回復を目指す「ネイチャーポジティブ」がビジネスの世界で注目されている。ネイチャーポジティブの達成には、「生態系の広がり」「生態系の状態」「種の絶滅リスク」の3つを改善する必要がある。
2020年を基準年として、それらの減少・劣化が2030年までに反転し、2050年には完全に回復することを目指し、取り組みが進められている。この連載では、ネイチャーポジティブの動向についてご紹介していく。
第2回は2050年のネットゼロ達成にも不可欠となる森林破壊ゼロの取り組みについて解説する。
【配信予定】
8月6日(火)③拡大する水産資源の枯渇にどう対処すべきか
8月6日(火)④高まる水リスクと淡水の生物多様性の取り組み
8月7日(水)⑤ネイチャーポジティブ時代の金融機関の役割
サプライチェーン全体を通じた活動が求められる
国連によると、毎年推計1000万ヘクタール(東京ドーム約213万個分)もの森林が失われている(2015年~2020年)。その主な原因は、農地開発や木材需要による伐採など人間の消費活動だ。これらの森林破壊は、気候変動の主因である温室効果ガス(GHG)排出にもつながっている。
そうした中、あらゆる産業分野の企業に、サプライチェーン全体を通じた森林破壊ゼロと回復(ネイチャーポジティブ)、そして温室効果ガスの排出削減(カーボンニュートラル)が求められ始めている。
陸域生物種の約8割は森林に生息しているといわれ、陸域の生物多様性を考えるうえで森林保全は重要な課題だ。1990年代~2000年代に国際社会は「生物多様性条約」や「愛知目標」といった枠組みの合意を通じて、その保全を目指してきた。しかし、そうした目標の多くは未達に終わったまま、現在は保全を超え、回復を目指すネイチャーポジティブが求められるようになっている。