ブラックエレファント、いつか起きるとわかっていながら誰も対処しない事態を考えよ。
予測不可能なことだがいったん起きれば甚大な被害が出るブラックスワンはクレジット市場を語る際に欠くことができない。さらに厄介なのが、いつか起きることは明白で起きれば影響が大きいが、なぜか見て見ぬふりばかりのブラックエレファントだ。
地震、台風、豪雨など次から次へと起きる自然災害にどう対応するか。通常業務をどう継続するかのBCP的発想のみならず、サプライチェーンのリスク管理の観点でも重要だ。金融市場としても、その投資・融資先がどのようなリスクにさらされる可能性があるのか十分に頭の体操をしておくことが肝要になっている。本稿では、自然災害リスクについて、とくに金融市場にある側面から考えたい。
過小評価されている「水」
世界全体で報告された自然災害件数の断トツは洪水である。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の6「安全な水とトイレを世界中に」に設定されるまでもなく、水がなければ命は存続しえない。
その割に安全な水は公共財として世界的に過小評価されている。それが水の過剰な利用と水質の低下につながり、その代償を利用者に不公平な形で押し付けているありさまだ。水ストレスが、自然災害の発生頻度の高まりや被害の大きさ、加速する生物多様性喪失を通じて世界の経済的、社会的、政治的安定を脅かす要因となっている。
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