高騰が続く金に対して、原油は世界で増産が続き価格は落ち着く。半世紀の値動きを振り返る。
金価格が静かに上昇している。8月に1オンス当たり2500ドルを超えて史上最高値を更新。年初から2割超の上昇率となった。
金が1971年8月に変動相場制に移行して53年が過ぎた。移行前の金価格は1オンス=35ドルで固定されていた。半世紀で価値が70倍になった計算だが、金価格の歴史は必ずしも順風満帆とはいえない。
イラン革命やソ連のアフガニスタン侵攻の影響で1980年に1オンス=850ドルまで急騰した後、次の20年間は下げ続けて1999年に250ドルまで下落。1990年代に始まったグローバル化で米ドル中心の経済圏が拡大し、金利を生まない金の存在意義は薄れ、先進国の中央銀行はわれ先に保有する準備金を放出した。結局250ドルが変動相場制移行後の金価格の最初の底値となった。
2000年代になると中国など新興国の台頭と1990年代の上流投資不足が世界的な資源不足を招き、資源価格が軒並み急騰。金も2011年には1オンス=1900ドルをつける。しかし、リーマンショックの後遺症から2010年代に資源バブルは崩壊、原油とともに金も急落し、2015年に1050ドルという2番目の底値をつける。今に続く上昇波動はそこを起点に始まっている。
足元での金価格上昇要因は主に2つ考えられる。1つは世界の分断が進みグローバル化の時代が終焉して米ドル中心の世界が後退、ドル離れが起きていること。中国など新興国の中銀が自国の準備金を積み増している。1990年代と逆の現象だ。2つ目は実質金利の上げ止まりだ。金価格は実質金利と逆相関となる傾向が強く、今後の金利下落を先取りして買われている。紛争の拡大が分断を助長、利下げ期待でドル離れと金選好が進む。
金が歴史的な上昇相場を演じる一方、原油は値を下げている。
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