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アメリカへの80兆円投資には多くの課題がある。投資額が大きすぎ実行者や資金拠出者が不透明。外貨準備の流動性がなくなるリスクも。

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投資額が大きすぎ実行者や資金拠出者が不透明。外貨準備の流動性がなくなるリスクも。

対米直接投資に関する覚書の署名式で握手する赤沢亮正経済再生担当相とラトニック米商務長官 (写真:時事)

日本が関税率引き下げと引き換えにトランプ政権と約束した5500億ドル(約80兆円)の対米投資に関しては3つの疑問がある。

1つ目は投資額が大きすぎるという点だ。2024年末時点の日本による対米直接投資残高は8192億ドル(約119兆円)である中、その約7割に当たる5500億ドルの投資を今後3年半の間に実行するというのはあまりに規模が大きすぎないだろうか。ちなみに過去3年間の平均対米直接投資残高の増加額は年約200億ドルであるため、今後3年半の間はこれまでの8倍のペースで対米投資が行われることになる。

誰が投資を実行する?

2つ目は誰が投資を実行するのかという点だ。ファイナンスはJBIC(国際協力銀行)などによる投資・融資・融資保証とされているが、そもそも誰(どの企業)が投資を実行するのかという点が不明だ。投資案件を選定するのはトランプ米大統領とされているが、実行するのは誰なのか。日米間で交わした対米直接投資に関する覚書によれば、日本側は「大統領が投資先を選定したと通知されてから45営業日以上経過した日に、アメリカ側が指定する口座に米ドル建ての即時利用可能な資金を拠出する」ことになっている。つまり、投資の実行先を決める前に、取りあえず必要な資金を振り込めということなのか?

3つ目は誰が資金を出すのかという点だ。JBICの現在の融資・融資保証・出資残高は約18兆円だ。すべてをJBICがファイナンスするのではないとしても、80兆円もの巨額の資金をどのように調達するのだろうか?

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