有料会員限定

相互関税公表後の「米国売り」はいつまで続くのか。資金流出を避けるためアメリカ政府は直接投資拡大や貿易赤字削減に舵

✎ 1〜 ✎ 358 ✎ 359 ✎ 360 ✎ 361
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
基軸通貨としての米ドル維持のため、アメリカへの直接投資増加や貿易赤字を減らす方向でベッセント米財務長官は主要国との通商交渉を進めている (写真:Getty Images)

4月下旬にアメリカへ出張に行き、現地の当局者やヘッジファンドなどの投資家の話を聞いた。その際、多くの人たちが懸念していたのは、今後、アメリカから投資資金が流出し、米ドルが下落基調をたどるのではないかということだった。2023年、2024年はアメリカ経済の独り勝ち状態が目立ち、とくにアメリカのハイテク株への資金流入が続いた。その前の2022年も米ドルは主要通貨中最強通貨で、2021年は2番目に強い通貨となっていたことから、過去4年間、アメリカへの大きな資金流入が続いていたということができるだろう。

つまり、過去数年間、世界の投資家はアメリカ資産をオーバーウェートにしてきた可能性が高い。そして、今後はそれを少なくともニュートラルにまで引き下げる可能性は高く、その過程で米ドルが売られるのではないかという見方が広がっている。

世界の投資家が「米国売り」?

実際、トランプ米大統領が高率な相互関税を公表した4月2日以降、5月23日までの2カ月弱の間、米ドルは主要10通貨の中で独歩安となっている。米ドル円相場は1ドル=150円近辺から142円台まで下落しているが、円は主要10通貨の中で5番目に強い通貨と、中位のパフォーマンスとなっており、米ドル円相場は「米ドル安主導」で下落していることがわかる。

また、長期金利の動きを見ると、ほかの主要10年国債金利は4月2日以降おおむね横ばいか低下している一方、アメリカ10年国債金利は30ベーシス‌‌ポイント以上上昇しており、カナダと並んで長期金利の上昇が目立つ。NYダウ株価指数も世界の主要株価指数の中でアンダーパフォームしていることから、世界の投資家が「米国売り」に動いている可能性は否定できない。

コモディティー市場では金が独歩高となっていて5月初めには最高値を更新した。ちなみに主要通貨の中で最も強くなっているのはスイス・フランとなっており、市場参加者が先行きの不透明感を強めて資金を金やスイス・フランなどに退避させている可能性を示唆している。

次ページアメリカへの資金流入をどうやって増やすか?
関連記事
トピックボードAD