「プラザ合意2.0」で円安是正というまさかの展開 円をはじめユーロや人民元にも悪い話ではない
2025年の「びっくり予想」=ブラックスワン的なシナリオを挙げるとすれば、国際協調によりドル高是正を図ったプラザ合意の再来だ。第2次トランプ政権が踏み切る理屈は立つ。
2025年の為替市場に関しては、ドル高続伸を予想する声が相変わらず多い。実際、現在入手可能な情報に基づく限り、それは合理的な予想といわざるをえない。
事実としてアメリカの労働生産性(ここでは時間当たり実質GDP)の伸びは先進国でも突出しており、その分、中立金利(経済に対して緩和的でも引き締め的でもない政策金利水準)も上がっていると考えるのが自然ではある。
2025年はアメリカの「利下げの終わり」はおろか、「利上げの始まり」がどこかのタイミングで織り込まれ始めるのではないかとの声すら見られる。あながち否定しかねる状況である。
しかし、ドル高相場が続くほど、「低金利やドル安を志向する第2次トランプ政権がドル全面高をどれほど許容するのか」という市場の思惑は強まるだろう。
インフレよりドル高のほうが都合がよいものの…
もちろん、インフレ高止まりが社会問題化し、そのおかげでバイデン政権が倒れ、自らの再選に漕ぎつけたのだから、建前では低金利・ドル安を望みつつも本音では「インフレが終息しない間はドル高を容認」と考えるのが基本線だろう。
ベッセント次期米財務長官が財政規律派ゆえに米金利が低下し、結果としてドル安が実現するという解釈も一時期はもてはやされたが、時の政権にとって世論の離反につながりかねないインフレこそ忌避すべき経済現象であり、基本的には「ドル高のほうが都合はよい」と考えるのが自然である。
しかし、実効ドル相場を見た場合、名目・実質ベースともに過去10年以上、上昇局面が続いており、実質ベースに至ってはすでに1985年のプラザ合意前後の水準に接近している。
国際協調によるドル高是正が正当化されたプラザ合意当時と同じ水準が視野に入る事実を、保護主義推進者であるトランプ氏がどう評価するか。
1985年当時のレーガン大統領は、アメリカ国内(特に議会)の論調が保護主義に傾斜することを危惧してプラザ合意の必要性に至ったが、トランプ氏は自身の政治信条に基づき率直なドル高是正を求めるかもしれない。
もしくは、為替経路ではなく、ドル高を放置したうえで保護主義者らしく追加関税というより制裁色の強い挙動に訴えかける可能性もある。
いずれにせよ、ドル高が放置された場合、それが政治的に許容されるのかは注目の論点と言える。
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