トランプ関税での株価急落も世界市場は急回復。米中緊張緩和に国内要因が日本株の上昇基調を後押しする。

トランプ米大統領が「相互関税」の名の下に関税大幅引き上げを4月2日に公表した。「相互関税」の関税率は、日本24%、EU(欧州連合)20%、中国34%などと事前の想定を大幅に上回った。この関税引き上げはアメリカにインフレ再加速と景気減速をもたらすと、FOMC(米連邦公開市場委員会)参加者を含め多くのエコノミストが予想した。またアメリカへの輸出国においても輸出の数量減、採算悪化などから景気減速が懸念された。
その結果、トランプ大統領による「相互関税」発表後に世界的に株価が急落した。例えば、アメリカの代表的な株価指数であるS&P500は4月2日終値から8日終値にかけ12.1%下落し、日本のTOPIX(東証株価指数)も4月7日終値にかけ13.6%下落した。
しかしS&P500は5月2日に、TOPIXは4月28日に「相互関税」公表前の株価水準を回復。両指数とも「相互関税」公表による株価急落を1カ月内で克服し、その後、さらに上昇した。アメリカ・日本以外の国・地域も同様に株価は急回復した。前回の本欄で、米著名投資家バフェット氏の名言の1つ「周囲が恐れているときには貪欲であれ」を引用したが、その言葉が有用な展開となった。
政策の修正期待とFRBの金融緩和姿勢強化
この世界的な株価急回復の主因を2つ挙げると、1つ目はアメリカの関税引き上げ政策に対する修正期待だ。トランプ大統領は4月9日に発動した「相互関税」の一部について、同日に90日間の一時停止を許可し、その通商交渉を進める方針を示した。
関税引き上げ政策が米経済に深刻な打撃をもたらし、投資家が米金融資産を敬遠。その結果、米国株安、債券安(債券利回り上昇)、ドル安のトリプル安が進行する危険性をトランプ大統領も理解した。とくに市場では米国債利回り上昇に政策修正で同大統領が対応する、との期待が強まったと考えられる。
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