ガザでの戦闘開始から2年。主要国がパレスチナを「国家承認」する中、見送った日本政府。これから払わされる「ツケ」とは

2025年10月7日、パレスチナ自治区ガザでの戦闘開始から丸2年が過ぎた。6万5000人以上の命が奪われ、その多くが子どもを含む民間人といわれている。
この2年間で浮き彫りになったのは、国際社会の無力さである。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は「国際法違反が常態化している」と指摘し、安保理が停戦決議を試みたが、アメリカの拒否権によって議論は封じられた。
アメリカの支援を受けながらイスラエルはガザだけでなくパレスチナの西岸地区や、その他の周辺国への攻撃にも手を広げる。これに対して日本や欧州をはじめとした各国は実効性を持って止めることはなかった。欧米発の「人権と国際法を重んじる」という建前は、完全に崩れてしまった。
欧州各国は国家承認や制裁措置で対応
しかしここへ来て、欧州主要国の態度が大きく変わりはじめた。9月21日にはパレスチナ問題の「張本人」とも言えるイギリスや、カナダ、オーストラリア、ポルトガル、そして翌22日にはフランスが、パレスチナ国家を承認した。
きっかけは2025年の春以降、ガザでの飢餓が顕著に報道されるようになったことだった。
25年3月、イスラエル軍がガザへの食料などの搬入をほぼ全面的に遮断したことにより、餓死者が増えていった。その惨状が世界に伝わると、欧州各国やカナダなどが次々とイスラエルの国際法違反を批判し始めたのだ。
それまでも空爆で多くの民間人の死者が出ていたが、イスラエルは「ハマスがいた」などと正当性を主張し、各国が追及できなかったと思われる。しかし飢餓は誰の目にも明らかな人道犯罪として、態度を強めた。なお、3月時点ですでに5万人以上が亡くなっていた。
この結果として、パレスチナ国家承認の「第3の波」が到来した。すでに世界の大多数が国家として承認済みのパレスチナだが、今回イギリスやフランス、カナダといった主要先進国の一角が加わった歴史的意味は大きい。
当然、国家承認でガザの非人道的状況が終わるわけではない。しかしイギリス、カナダ、オーストラリアなどの5カ国は今年6月、イスラエルの国家治安相と財務相の2人に対して制裁措置をとり、実効力のある対応にも乗り出している。両閣僚によるガザへの支援物資搬入への反対など、暴力や差別を煽動する発言が理由だ。
その一方で日本は国家承認の波に乗らず、イスラエルに対する実効性のある対応策も出せていないままだ。日本政府はイスラエルとパレスチナの「二国家解決」を支持する立場にもかかわらず、パレスチナを国家として承認をしないことは矛盾している。
今回日本が国家承認を見送ったことを受け、アラブ諸国には失望が広がっている。現地の複数のニュースは「日本がパレスチナの国家承認を『拒否』した」と報じ、「(これは)イスラエルの最も近い同盟国であるアメリカ側に日本を位置づけるもの」との評価も見られた。
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