「過剰な便乗値上げ」で利益率が急上昇 日本企業の"強欲"がリフレ政策を台無しにする≪グリードフレーション≫の罠

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(撮影:梅谷秀司)

自民党新総裁の高市早苗氏はアベノミクスを継承すると考えられており、積極財政派であると言われています。アベノミクスの「三本の矢」の一つはリフレーションでした。

リフレ政策とは、一般的に、通貨の量を増やし、政府支出を増加させ、金利を下げる政策です。実際、第2次安倍政権以降、この政策が実施されました。この政策には、さまざまなメリットが想定されています。

企業側

需要が増えることで、雇用が増え失業率が低下します。需要増に伴い、設備投資も増加します。インフレによる利益増も見込まれるため、賃上げも可能になるとされています。

個人側

インフレになると見込んで、消費者は早めにモノを買います。失業率が下がることで労働市場の需給が改善し、労働者はより高い賃金を求めるようになります。

これらの作用により、経済は成長するというシナリオです。

リフレ政策の限界とは?

しかし、リフレ政策は、この経済成長のシナリオを支える環境作りであり、政府支出を除けば直接的な需要促進策ではないため、経済成長に直結すると保証されている事実はありません。そこまで単純な因果関係ではないのです。

これはインフレ政策の欠点です。金利を上げると、企業の負担は増えるので、設備投資は減ります。これは統計で確認できます。しかし、金利を下げても、企業の負担は軽くなるものの、設備投資を増やす確率は低いです。

同様に、増税をすると消費は減りますが、減税をしても消費者が貯金に回せば、消費は増えないのです。だから、リフレ政策は、「pushing on a string政策」と言います。紐を引っ張ると、引っ張る方向に動きます。押すと、逆の効果はありません。

要するに、金利が下がれば、企業は借り入れや設備投資をしやすくなることは事実ですが、金利が低いというだけで自動的に設備投資が増えるとは限りません。「設備投資を増やしてくれれば経済は成長する」という前提があるにすぎません。

また、賃上げは企業が決定するため、リフレ政策だけで賃上げが必然的に起こる保証はありません。

ここで重要になるのは、企業の「利益」ではなく、「利益率」です。

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