
実質賃金の伸びは一過性にすぎない
厚生労働省が9月5日に発表した毎月勤労統計調査によると、7月の実質賃金は前年同月比0.5%増と、7カ月ぶりにプラスとなった。
一般的に6月と7月と12月はボーナスの支給時期であり、これによって実質賃金の前年同月比がプラスになる傾向がある。今回もその影響でプラスになっている可能性が強い。したがって、これは一時的なものであり、実質賃金の下落傾向は今後も続く可能性が高い。
人々の生活は名目賃金ではなく、実質賃金によって決まる。それがこのように低下傾向にあるのは、決して放置できない事態だ。この傾向を逆転させるために何をすべきか、真剣に考える必要がある。
物価問題は国民生活に直接影響するものであるが、そのメカニズムはかなり複雑だ。これについては、7月6日配信の本連載(消費税減税も現金給付も物価高対策としてまったくの見当違いだ! 日本を破滅させる「賃金と物価の悪循環」という病)で詳しく説明したが、要点を繰り返すと次のようになる。
日本では、長らく消費者物価の伸びがゼロ近くである状態が続いた。物価上昇率が高まらないことが日本経済の停滞の原因であると言われ、第2次安倍晋三政権下で日本銀行が推し進めた「異次元の金融緩和」政策は、消費者物価の上昇率を2%に引き上げることを目的とした。
しかし、この目的は実現しなかった。日銀が大量の国債を買い上げ、為替レートを円安に導いたにもかかわらず、消費者物価上昇率がほとんどゼロであるような状況が続いた。
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