
「賃金が上昇し、物価も上昇する」という状況は「賃金と物価の好循環」であると評価されている。だが、それは真実なのか(写真:ブルームバーグ)
日本の物価高騰の原因は、2023年から大きく変化した。これまで海外要因によって決まっていた国内物価が、国内要因によって決まるようになったのだ。とりわけ大きな変化は、賃金の引き上げが物価に転嫁されるようになったことだ。これは賃金と物価の悪循環であり、日本を破滅させる恐ろしい病だ――。野口悠紀雄氏による連載第150回。
輸入物価が10%下落なのに消費者物価は3.7%も上昇
現在の日本が抱える大きな問題は、物価高騰が収まらないことだ。
消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の対前年同月比の増減率は、2025年5月には3.7%だった。3%を超える伸び率は2024年12月から続いている。
ここで注意すべきは、物価高騰の原因だ。従来の日本では、国内の物価動向はほぼ輸入物価の動向で決まっていた。ところが現在は、これとはまったく異なる状態になっている。
日本銀行がまとめた企業物価指数を見ると、輸入物価指数は下落している。円ベースでは2024年9月以降、前年同月比でマイナスの月が多く、2025年5月速報値では同10.3%下落という、驚くべき値になっている。
本来なら国内の消費者物価は下落してしかるべきなのに、現実には物価高騰が収まらない。信じられないような事態が進行しているといわざるをえない。
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