まず考えられるのは、コメ価格の高騰だ。これが国内の消費者物価を引き上げる要因になっていることは間違いない。5月の消費者物価指数を見ると、コメ価格は対前年同月比101%の上昇率となっており、極めて高い。
ただし、消費者物価全体に対する寄与度は0.38だ。だから、コメだけの問題ではないことがわかる。つまり、最近時点の消費者物価は、主として食料品以外の要因によって上昇していることがわかる。
単位労働コストから労働生産性の伸びを見る
消費者物価を上昇させているもう1つの重要な要因として、賃金の上昇が考えられる。これを分析するための指標として、単位労働コストがある。これは次のような式によって定義される指標だ。
つまり、1単位の最終生産物を作るために必要とされる賃金の支払い額である。これは労働生産性を示す。
労働生産性が上昇すれば、1単位の最終生産物を作るために必要とされる賃金支払額は減少するから、単位労働コストは低下する。それに対して、労働生産性が下落すれば、単位労働コストは上昇する。
単位労働コストは、 GDP統計における実質GDPと名目雇用者報酬から計算できる。その推移は、図に示したとおりだ(季節調整値)。これからわかるように、日本の労働生産性は長期にわたって低下を続けている(2020年に単位労働コストが急上昇しているのは、新型コロナによって実質GDPが下落する半面で、賃金が下がらなかったことによる)。

最近時点での単位労働コスト上昇の経緯は、次のようなものであった。
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