
2040年度のカーボンニュートラル(温室効果ガスの実質排出量ゼロ)実現を掲げ、新規領域として、「再生可能エネルギー(再エネ)」事業の開拓も進めるNTTグループ。中核を担うのが、2019年に設立されたNTTアノードエナジーだ。
太陽光などの再エネ発電を手がけ、2023年には日本最大規模の風力発電所を展開するGPI(グリーンパワーインベストメント)社をJERAと共同で買収。蓄電所事業の拡大にも注力する。NTTの再エネ事業の現在地と展望について、NTTアノードエナジーの岸本照之社長に聞いた。
買収したGPIは陸上風力のパイオニアだ
――どのような経緯で再エネ事業を展開しているのですか。
2019年、NTTの澤田純・社長(当時)が「『スマートエネルギー』のキーワードで新ビジネスをつくろう」とし、NTTアノードエナジーが発足した。最初は30名ほどだったが、2022年7月にNTTファシリティーズのエンジニアリング、オペレーション&メンテナンス(O&M)を現場で見ているメンバーが2500名ほど加わった。東日本大震災以降に再エネの固定価格買い取り制度(FIT)が始まり、ファシリティーズも全国規模でメガソーラーを自己資産で造った。それが今日のわれわれの財産になっている。
もともと、NTTの電話局の電話設備は電力を必要とし、局内に蓄電池を置いて、電力を止めることなく提供し続ける。2024年の能登半島地震でも停電からの復旧に携わったが、通信ビルはNTTの設備だけでなく、KDDI、ソフトバンクといった各事業者のネットワークの設備を預かり、われわれが電力を提供している。
実は、それがわれわれの仕事のベースだ。再エネでもコアになるのは、こうしたエンジニアリング、O&Mだ。通信ビルだけでなく、昨今はグループ企業のデータセンター(DC)の常駐保守も担っている。その経験を生かして、一般DCの電力、空調のファシリティーマネジメントの保守も行う。
――2023年に約2500億円を投じ、日本最大規模の風力発電所を擁するGPIを買収しました。
彼らは陸上風力発電のパイオニアであり、そのエキスパートだ。風力の世界では、GPIがある種の陳情なども通じて、国の制度を一緒につくっていったところもある。それだけでなく、地域で発電所を造って運転を開始すると35年ぐらい使うことになり、地域の子どもを呼んで見学会をし、環境教育をするといった地域密着の活動を地道にやっている。GPIは地域に本当に入り込み、まさにNTTグループが目指す地域の課題解決やウェルビーイングと(理念が)合致する本当によいパートナーだった。
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