
続投か、世代交代か――。
NTTが推進する人事制度改革は、人事畑が長い島田明社長(67)の肝煎りで、近年の幹部人事にも影響を及ぼしているとみられる。2024年には、NTTドコモ社長にリクルートからの転職組で金融事業を牽引してきた前田義晃氏(55)が50代前半の若さで就任する抜擢人事が話題を集めた。
とくにNTTでは従来、調整力が求められるコーポレート系部門を歩んだ人材が重用される傾向が強い。NTT東日本・西日本、NTTコミュニケーションズ(コム=現NTTドコモビジネス)という1999年まで旧NTTの本体だった主力事業会社で、総務・人事・労務、財務・経営企画などを担当した人材が出世するケースが多いとされた。ただ足元では、執行役員でも出戻り組やドコモ出身者が存在感を放つなど、人材多様化が進む。2025年には、NTTデータグループ出身のパトリチオ・マペッリ氏(70)が外国人では初めて持ち株会社の取締役に就任した。従来にない人事は、経営陣とて例外ではない。
2026年の注目は持ち株会社の人事
目下注目されるのが、2026年のNTT持ち株会社の人事だ。
2022年に社長に就任した島田氏は1981年入社で、執行役員で唯一民営化前の入社世代。NTT社長の任期は「原則2期4年」(NTTグループ社員)とささやかれており、2026年は節目の年にあたる。島田氏の前任だった澤田純会長(70)も4年で退任した。ただし、前々任の鵜浦博夫氏は在任6年、その前の三浦惺氏は同5年で、実際は4年超になることも多い。澤田氏も社長退任後に代表権を2年維持し、経営中枢に計6年、身を置いた。
島田氏はグループ大再編を進めた澤田会長の改革路線を継続し、再編の着実な実行や新規事業の育成など、NTTの事業ポートフォリオの転換を図っている。破壊的な改革を一気に進めた澤田氏に対し、「実務家」(NTT関係者)の評がある島田氏は、大胆さと慎重さを両立しつつ着実に変革を進めている印象だ。足元では通信業界を分断したNTT法見直しが一段落し、澤田時代に実現しなかったNTTデータグループの完全子会社化や、ドコモの銀行買収なども進んだ。大型経営課題は一服した感もある。
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