自民党の提言により、一気に現実味を帯びてきたNTT法の廃止。NTTグループの事業モデル転換への起爆剤となる可能性がある。
「将来のNTTは、携帯会社や地域通信会社、SIer、メーカーなどさまざまな顔を持つことになる。自動車の製造だって視野に入る。かなりグローバルなコングロマリット(複合企業体)になっているはずだ」
NTTの澤田純会長は2023年12月に行った東洋経済の取材に対し、2030~2040年を見据えたグループの将来像をそう語った(インタビュー全文はこちら)。
NTTを縛り付けてきた「NTT法」を見直す議論が今、ヒートアップしている。
NTT法は1984年、NTTの前身である日本電信電話公社(電電公社)の民営化と通信自由化に伴い、NTTグループの事業範囲や守るべき責務などを定めるために制定された(詳細はこちら)。以来、国の莫大な設備を引き継いだ強大なNTTグループを押さえつけるNTT法と、一定のシェアを超えた通信事業者を規制する「電気通信事業法」の両輪によって、国内の通信市場は公正な競争環境を保ってきた。
しかし自民党が2023年12月に公表した提言は、NTT法の一部規制を電気通信事業法などへ寄せたうえで、2025年をメドにNTT法を廃止するよう求めている。所管する総務省は有識者会議で審議を進め、今夏をメドに答申をとりまとめる方針だ。
仮に自民党の提言通りになれば、通信政策の歴史的な方針転換となる。
競合3社の猛反発むなしく…
そこに「待った」をかけるのが、競合である大手キャリア3社だ。NTT法の一部改正にとどめたい3キャリアと、廃止にまで持ち込みたいNTTとの間で、意見は真っ二つに割れている。
自民党のプロジェクトチーム(PT)が立ち上がった2023年8月以降、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの首脳陣らはたびたび会見を開いて意見を表明。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長はX上で「最悪の愚策」と断じるなど、表舞台で反対運動を繰り広げてきた。
競合が一様に警戒するのは、事業再編などへの足かせが取れることで「巨大NTTの回帰」(KDDIの高橋誠社長)が進むことだ。
こうした懸念に対し、NTTの澤田会長は「いったいいつまで(NTTと自社を)蟻と象のように言っているのか。反対するのは、『今を守りたい』という考え方だ」と意に介さない。さらにNTT法廃止は「変革のトリガーとなる」と強調し、冒頭のように壮大な将来像を描いてみせた。
結果的に、自民党の提言はNTT側の意向とほぼ同じ方向性でまとめられた。競合の猛反発をよそに、NTTの“完全勝利”となったのはなぜか。大きく2つの要因があると考えられる。
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