いつの間にか消えた「NTT法廃止論」、空転の裏側 政治に振り回された議論が浮き彫りにした難題
「わが国の情報通信産業が世界と勝負できる環境を作る。時代に合わなくなった足かせはできる限り外すのが大きな方向性だ。改革を着実に進めるための前向きで闊達な議論を期待したい」
12月3日夜、自民党本部で開かれた「NTT法の在り方に関する特命委員会」と情報通信戦略調査会の合同会議。新たに特命委委員長に就いた小林鷹之衆院議員は冒頭、そう意気込んだ。
約40年前のNTT民営化に際して、国内市場の寡占化を防ぐために制定されたNTT法。NTTに課された「足かせを外す」方向で、政府・与党は昨年夏から規制の見直しを検討してきた。
しかしその議論は、小林氏の威勢のよい言葉とは裏腹に、「法廃止」まで取り沙汰された1年前から大幅にトーンダウンするかたちで終盤を迎えた。
「規制強化」も盛り込んだ答申案
この日の会合は、規制見直しに向けて総務省の有識者会議がまとめた最終答申案の内容を、総務省が自民党に説明する場だった。
NTT法はすでに4月の段階で一部改正され、NTTに対する研究成果の普及責務撤廃のほか、外国人役員の就任規制緩和などが行われた。一方、自民党は2023年12月に出した提言で、「2025年の通常国会をメドに、NTT法を廃止」とさらに踏み込んだ対応も要望しており、総務省で議論が続けられてきた。
今回まとめられた最終答申案には、固定電話を全国一律で提供するようNTTに義務付ける「ユニバーサルサービス」の制度を見直し、モバイル通信網を使った固定電話も同サービスに位置づけることを容認する内容が盛り込まれた。
サービスの提供対象地域についても、NTTに「あまねく」義務付けられていた現行制度を見直し、他事業者がいない場所に限って求める「最終保障提供責務」に緩和する方向性が示された。固定電話縮小への対応を迫られるNTTは「固定からモバイルを軸とした体系に見直す」ように求めており、要望が一部反映される結果になった。
もっとも、最終答申案を細かく読み解くと、NTTに対する規制の現状維持、さらには規制強化を求める内容も目立つ。顕著なのは、NTTと他事業者間で公正競争環境を確保するための制度の見直しだ。
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