いつの間にか消えた「NTT法廃止論」、空転の裏側 政治に振り回された議論が浮き彫りにした難題
NTT法廃止に強く反対してきた競合キャリアは、議論が尻すぼみになったことに喜びの色を隠さない。
「明るい表情で、明るい表情で」。反対派の急先鋒だったKDDIの髙橋誠社長は10月29日の総務省有識者会議に出席後、記者団の取材にこのように口火を切り、NTTの保有資産に対する規制強化が行われる見通しになっていることなどを評価した。
NTTが保有する光ファイバー網などを資本分離するよう提案してきたソフトバンクの宮川潤一社長は「この議論はあるべくしてあったから、恨みつらみはまったくない。日本の通信のために落ち着くところに落ち着いてきた」と話した。そのうえで、「自民党が最後どういう結論を出すか注視したい。大逆転があるとしたら、もう1度大声を出さないといけない時期がくるかもしれない」と、政治主導で有識者会議の結論が覆らないように牽制した。
NTT側は「かなり満足している」
一方、劣勢を強いられたNTTの島田社長は同日、「NTT法ができて40年で初めてユニバーサルサービスが変わるのは、すごくエポックメイキングだ。ユニバーサルサービスの議論はかなり満足している」と強調した。
NTTは、固定電話縮小への対応を喫緊の経営課題に位置づける。固定電話をユニバーサルサービス制度に基づき不採算地域を含めて提供し続けるのにはコストがかかり、国が一部費用を支援しているものの、それでも発生する多額の赤字をNTT側が負担している実態があった。制度改正が実現すれば、大幅な赤字縮小が期待できるという。
NTTにとっては、すでに今春のNTT法改正で、国際競争力強化に向けた規制緩和が実現している。島田社長によると、研究成果の普及責務が撤廃されたことで、NTTが進める光電融合技術を活用した次世代の通信基盤「IOWN(アイオン)」構想の展開に向け、海外のパートナー企業の懸念が払拭されたという。法改正で可能になった社名変更や外国人役員登用も、来年行われる見通しだ。NTT法廃止にまで至らなくても、議論を通じて大きな成果が得られたとみているようだ。
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