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「ミスターJGB」が懸念する日本国債市場の脆さ、齋藤通雄元理財局長インタビュー「日銀に代わる国債保有は銀行だけで吸収しきれない」

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野村資本市場研究所研究の齋藤通雄理事
齋藤通雄/さいとう・みちお 1987年に東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。主計局調査課長や理財局国債企画課長、金融庁総務企画局参事官などを歴任した後、2022年に理財局長就任。2023年7月に財務省を退職し、同年11月より野村資本市場研究所研究理事(現職)(撮影:尾形文繁)

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今年4月ごろから超長期債の利回りが不安定化している。参議院議員選挙では拡張的な財政政策を掲げる野党が躍進し、債券市場の警戒感が強まっている。

日本の国債市場は今後どうなるのか、安定的な国債消化が揺らぐことはないのか。かつて大蔵省資金運用部の国債買い入れ停止をきっかけに長期金利が急騰した「運用部ショック」への対応に努め、「ミスターJGB」の異名を持つ齋藤通雄氏に聞いた。

都銀が金利急騰の原因か

――4月から5月にかけて、超長期債の利回りが急騰する場面がありました。要因についてどのように分析されていますか。

日本証券業協会の統計データを見ると、この春に超長期債を売り越していたのは都銀だ。都銀が5000億円を超える規模で4カ月ほど売り越している。

生命保険会社が買わなくなったという話もある。確かに2月、3月は売っていたが、逆に4月、5月は若干の買い越しに転じていた。

超長期国債の投資家別売買状況

私は、少なくともこのデータで把握できる限りにおいて、超長期金利上昇の主な要因は都銀の売りだと考えている。財務省が公開している国債入札の落札状況を見ると、2024年度の30年債入札は銀行の落札シェアが約3割、金額にして約2兆5000億円に上っている。

実は彼らが入札した2兆5000億円という額は、今年2月から5月までの売り越し額とほぼ一致している。何らかの理由で大手銀行が30年債の入札に参加して落札したものの、比較的短期間でそれを処分したと考えられる。

――7月に入ってからも超長期金利は高まっています。

これはおそらく別の要因によるものだ。売買データがないため裏付けはないが、参院選の情勢や、選挙後の日本の財政拡張懸念から、再び国債が売られているのではないかという観測が出ている。

5月までは海外投資家が超長期債を買い越していた。海外投資家は、当然ながら長期保有を前提に買っていない。日本の財政が悪化し金利が上昇する懸念があれば、買い越していた分を売却する可能性がある。そうした要因で、超長期金利が7月に大きく上がったのではないか。

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