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「ルールに従い、王道を歩め」 野中官房長官の決断で破綻認定下る。内心では反対の宮澤蔵相も、最後は異を唱えず 銀行行政が変わった日⑥

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野中広務官房長官(左)と宮澤喜一蔵相
金融監督庁案を支持した野中広務官房長官(左)と反対した宮澤喜一蔵相(写真:共同)
過去の金融政策・経済政策の検証に取り組む筆者が、当時の政策決定プロセスや当局者たちの人間模様に迫る。【月曜日更新】

1998年秋。一時国有化が決まった日本長期信用銀行をめぐり、最後に残った難題が「破綻認定」を下すかどうかだった。

与野党で合意した「特別公的管理」には、政府が銀行を破綻状態と認定し、そのうえで一時国有化する金融再生法36条と、破綻認定はせずに銀行が自主的に申請できる37条の2通りのルートがあった。後者の37条は、長銀のために与野党が特別に用意した条文である。

それまで住友信託銀行との合併を後押ししてきた経緯もあり、大蔵省は当然のように37条の適用を主張した。とくにこだわったのが蔵相の宮澤喜一である。もし長銀を債務超過と認定すれば日本の金融全体の信用に傷がつくと主張し、金融監督庁だけでなく、首相の小渕恵三にも「これは大変なことになる」と警告し続けていた。

だが、監督庁の現場は長銀を「実質債務超過」と見抜き、36条を適用すべきだという構えを崩さない。検察出身の監督庁長官、日野正晴は困り果て、監督部長の乾文男に「どうしたらいいか」と相談する。乾は毅然として答えた。

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