
相続税の申告手続きは非常に複雑で、相続人は通常、書類の作成を税理士に依頼する。税理士は遺産の分配方法などを助言し、さまざまな特例を駆使して税額をできるだけ抑えて算出する。
税理士は税のプロであり、「よもや間違いはあるまい」と思いがちだが、相続の世界では、税理士次第で税を払いすぎるという問題がしょっちゅう起きている。
税務署で申告書を精査した経験を持つ複数の国税出身の税理士が「ありがち」と指摘するのは、「1次相続」のことだけを考えるケースだ。
相続は、片方の親が亡くなったときの「1次相続」、もう片方の親が亡くなったときの「2次相続」と2回続く。1次相続のときに、2次相続を見据えて財産の分配を考えなければ、2次相続のときに税額が跳ね上がってしまう。
相続税を払いすぎるケース
例えば、父親の財産が自宅と預貯金で8000万円、母親の財産が金融資産を中心に8000万円、子供が1人で、父親が先に亡くなったとする。
1次相続のことだけを考えれば、配偶者控除を利用して相続税がゼロになるため、母親が全額を相続したほうがいい。しかし、これを選択すると、母親が亡くなったときの2次相続で、子供の相続税は3260万円まで上がってしまう。
2次相続までを見据えれば、1次相続のときに母親と子供が半分ずつ相続したほうがいい。母親の相続税はゼロで、子供に235万円の相続税はかかるが、2次相続のときに子供の相続税が1820万円に収まるためだ。
その結果、目先の1次相続だけを考えて遺産分配を決めると、通算して約1200万円もの相続税を多く支払うことになるのだ。
これは「極端な例示」というわけではない。
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