
7年前、横浜市に住む会社員、久保修也さん(60代・仮名)の父親(当時85歳)は自宅近くの駅前で転倒。頭蓋骨を骨折する大ケガを負った。幸い命に別状はなかったが、父親は久保さんに、「今後、財産の管理や築40年になる家の扱いが心配だ」とこぼすようになった。
そこで久保さんは親の財産を管理する方法などをインターネットで調べ、行き着いたのが、地元の信用金庫が窓口になって提供している家族信託だった。
「親の口座の管理、資金移動が自由にできるうえ、信託契約書が遺言の代わりになってとても便利だった。父は最後には字を書く体力もなくなった。その中で誰がどんな財産を相続していくか、父の希望を聞いて公正証書で契約書を作った」と久保さんは話す。
父親はサービス付き高齢者向け住宅に入居することになったが、施設利用料や母親の介護費用も久保さんが父親から信託された預金を使って滞りなく支払うことができた。今年2月に父親は死去したが、実家の売却で得たお金も問題なく相続できた。
家族信託を活用すれば、親が障害を負ったり、認知症になったりしても子どもが実家を売却して介護費用に充てることが可能になる。その仕組みを一般社団法人実家信託協会理事長の杉谷範子司法書士に解説してもらった。
身近な人との間でも手軽に使える
信託とは、契約に基づいて財産管理などを信頼できる人(受託者・子ども)に託し、受益者(親)はその財産から得られる利益を得る仕組みのことです。財産の名義(所有権)は受託者に移りますが、財産権(受益権)は受益者に残ります。
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