形骸化するいじめ防止法、改正求める6万筆の重み。自殺の遺族が衆参両院に署名提出、「命守りたい」
「古い法律になっている。そろそろ変えなきゃいけないよね、という話が(国会議員の中でも)出ている。改正に向けた機運が醸成されるよう、私からも働きかけていきます」
2025年11月26日、参議院議員会館の一室。そう力強く語った参議院の熊谷裕人・文教科学委員長(立憲民主党)の手元には、「いじめ防止対策推進法の改正を!」と題された6万4792筆の署名簿があった。
長崎市の私立海星高校で17年に起きたいじめ自殺の遺族が、約2年かけてウェブ上で集めたものだ(詳細はこちら)。亡くなった福浦勇斗くん(名字のみ仮名)の両親、大助さんとさおりさんはこの日、署名を衆参両院と文部科学省へ提出した(法改正を求める署名には、このサイトから協力できる)。
その際の懇談で、冒頭の前向きな発言が飛び出した。さおりさんは声を詰まらせながら「子供の命を守りたいんです」と訴えた。脳裏には亡き愛息の顔が浮かぶ。「こんなことをしても、勇斗はもう戻ってこない」との寂しさに襲われながら、「未来ある子供たちのために、どうかお願いします」と何度も深く頭を下げた。
機能不全に陥る「いじめ防止法」
いじめ防止法は2013年、超党派の議員立法で成立。いじめを法的に禁止し、学校や行政に予防措置を義務づける。自殺や不登校などの「重大事態」発生時は、背景調査や再発防止も求める。
制定の契機は、11年に滋賀県大津市で発生した男子中学生のいじめ自殺だった。被害者が「自殺の練習」を強要されていたなど、センセーショナルな加害内容で全国的な注目を集めた。いじめ防止法は、死者が受けた艱難辛苦の上に依って立つ、まさに「血の法律」と呼ぶべきものなのだ。




















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