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形骸化するいじめ防止法、改正求める6万筆の重み。自殺の遺族が衆参両院に署名提出、「命守りたい」

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ただ、施行から10年以上が経った今、残念ながら機能不全に陥っている。厚生労働省の発表では、24年に自殺した小中高生は529人で過去最多。背景の1つとして考えられるのが、いじめの増加だ。文科省によると、24年度のいじめ認知件数は約76万9000件、重大事態は約1400件といずれも過去最多を数える。

なぜ悲劇は繰り返されるのか。福浦夫妻はその原因として、「性善説」に基づいた現行法の危うさを挙げる。教育に携わる者は当然、いじめと真摯に向き合うはず――。これを前提にすべてを組み立てているため、違反時のペナルティーを設けていないのだ。

やりたい放題の学校に罰則を

例えば、勇斗くんのケースでは、当時の教頭が自殺を「突然死」や「転校」として扱わないかと遺族に提案。文科省が定める「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」は偽装を認めておらず、明らかに逸脱している。

ほかにも海星高校は、学校保険制度に基づく死亡見舞金の申請を怠ったり、加害者を一切指導しないまま卒業させたりした。揚げ句の果てに、自ら設置した第三者委員会による「自死の主たる要因はいじめ」との結論を根拠なく否定。調査を依頼しておきながら、不都合な結果が出ると従わない。そんな前代未聞の態度を今日まで貫いている。

ここまでやりたい放題を尽くしても、現行の法制度では、誰もとがめられない。海星高校のような私立高校は、公立のように教育委員会の傘下には入らず、各都道府県の知事部局が管轄する。これも問題をややこしくする。

私学は私立学校法で「自主・独立」を尊重されており、現場への第三者の介入が難しいからだ。遺族は行政に窮状を訴えたが、長崎県には「指導権限がないので国に言え」、文科省には「私学の許認可権は知事にあるので県に相談しろ」とたらい回しに遭った。

それどころか、長崎県の当時の担当者は「『突然死』の提案はギリ許せる」と発言し、学校側の隠蔽工作を追認。さらに「海星高校は真摯に対応している」などと述べ、遺族側の要望をことごとくはねのけた。

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