国税庁とのバトルが激化、狭まる“富裕層包囲網”。ルールどおり申告しても待ったがかかるケース続出

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タワーマンションが立ち並ぶ街並み
(撮影:今井康一)
10人に1人が相続税の課税対象になる大相続時代。「わが家に金目のものはない」と油断していると、とんでもない相続税が発生することがある。『週刊東洋経済』8月9日・16日合併号の特集は「知らないと損する相続」だ。事前に戦略を立てていれば、「そのとき」に慌てずに済む。
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「税務署から電話がかかってきて、相続に関して話を聞かせてほしいと言ってきた。どう対応すればいいのだろうか」

都内で中小企業を営む男性は昨年秋、顧問税理士の元を訪れた。

3年前に創業者だった父親が亡くなり、会社が保有する不動産や未上場株を相続。その際、取引のある金融機関の勧めもあって、一部の資産について相続財産の評価額を抑える対策を取った。その行為が税務署に目をつけられたのかもしれないと不安になって、税理士事務所に駆け込んだのだ。

実は今、こうした相談が税理士の元に数多く寄せられている。というのも、国税庁が「伝家の宝刀」を振りかざし、徴税強化に乗り出しているからだ。

伝家の宝刀とは、「財産評価基本通達第1章総則6項」、通称「総則6項」のこと。具体的には、「通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」というものだ。

相続税法では、相続税の対象となる財産の評価額について、相続時の「時価」により評価するとされている。しかし、市場が存在しない財産は時価がない。そのため、さまざまな財産の評価方法を定めているのが財産評価基本通達だ。

ただ、基本通達にある評価方式で算出した場合、評価が実態と懸け離れてしまうケースが多い。そうした乖離に目をつけた節税術に関し、ひどいケースは認めないとして設けられたのが総則6項というわけだ。

最高裁のお墨付き

しかしこの規定、非常に厄介な代物だ。基本通達どおりに評価額を算出しても、国税当局が「著しく不適当と見なせば、国税当局のさじ加減で運用できる」(ある税理士)規定だからだ。そのため以前はあまり使われていなかった。伝家の宝刀と言われるゆえんだ。

ところが、ここ数年、税務当局は、積極的に伝家の宝刀を抜いている。きっかけは2022年4月に出た最高裁判所の判決だった。

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