
「『IOWN(アイオン)』の最大のポイントは、いかに電力消費量を落としていく社会をつくるか、というところだ。まさに光電融合デバイスは、その本丸になる。世界で一緒にやっていただけるパートナーがしっかりと存在しており、前進していることを示せたと思っている」
NTTが新たな事業領域として最も注力しているのが、光電融合技術を活用した次世代通信基盤の「IOWN」だ。電気信号による従来の通信や演算処理を、高速・大容量で電力の消費量も少ない「光信号」によるものへと置き換えていく取り組みとして、2019年に構想が始まった。
それから6年の時を経て進化を遂げたIOWNの技術は、足元でコンピューティングの領域にまで入りつつある。NTTは10月6日に開催した説明会で、アメリカのブロードコム、台湾のアクトン・テクノロジーと連携し、サーバーのボード(基板)間接続を光化する光電融合デバイスの販売を2026年度に進めると明らかにした。説明会で島田明社長は冒頭のように強調し、これから本格的に光電融合デバイスメーカーを目指す方向性を鮮明にした。
光化はコンピューティング領域に拡大
IOWNについて、光の適用範囲をネットワークからコンピューティング領域に拡大させる構想を示すNTTは、段階的な技術の発展を計画している。「IOWN 1.0」と呼ばれるネットワークの領域では、2023年に高速・大容量、低遅延な「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」を商用化。例えば、データセンター(DC)間を結ぶ通信などに活用し、遅延性の観点から立地が限定されていたDCの整備可能地域を拡大、DC地方分散への貢献が期待される。
業界内では、「長距離伝送はうまくいっており、将来的に伝送の世代交代が起きる」(ある新興AI企業のインフラエンジニア)、「DC間の通信はどんどん光になるだろう」(DC事業者首脳)との声が上がっており、ネットワーク領域でのIOWNの利用は着実に進むとみられている。
もっとも、島田氏が今後注力する「本丸」として強調した光電融合デバイスはネットワーク領域の先であり、DCの内部に存在するコンピューティング領域を光化するための機器だ。