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〈ショパンコンクール〉ヤマハが"スタインウェイの牙城"に挑む意義――コンクールは「400mリレー」、総合楽器メーカーの強みと葛藤

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ヤマハは世界で最も多くピアノを生産する総合楽器メーカーだ(写真:ヤマハ)

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総合楽器メーカーであり、ピアノ生産台数で世界トップを誇るヤマハ。学校で誰もが触れたことのある鍵盤ハーモニカから、世界的なコンクールの舞台で活躍する最高峰のコンサートグランドピアノまで、その領域は幅広い。
「99.99%ピアノ一筋」のキャリアで、最高級フルコンサートピアノ「CFX」の開発に携わってきた松木温執行役員は、かねて「スタインウェイのような憧れのピアノを」という思いを抱いてきた。なぜヤマハは「頂点」にこだわり続けるのか。

――1967年に初代モデルが誕生したコンサートグランドピアノ「CF」シリーズ。この分野に力を注ぎ続ける意義は、どこにあるのでしょうか。

ピアノの頂点であるコンサートグランドを押さえることは、ヤマハの宿命であり最重要課題だ。

たとえるならピアノの世界は、オセロのような構造になっている。角を取っていなければ全部ひっくり返されてしまう。ビジネスとして収益を得るという点では、平地の広い面を取る勝負だが、必ず一つの角を取っていないと最後まで生き残れない。

いわば「頂上戦略」。トップピアニストの表現に耐えうる楽器を作れるメーカーであることを、証明し続けなければならない。

ブランドの価値は「頂点」から降り注ぐ

――ヤマハはピアノ生産台数で世界一であり、学校教育用の楽器なども広く普及させ、親しみやすいブランドイメージも確立しています。

安価なものだけで面を取り続けて生き残れる業界もあるとは思うが、ピアノの場合、それはほぼ不可能。やはり最高のものを提供できないメーカーが、他のいいピアノを作れるはずがない。コンサートグランドピアノというのは、その象徴だ。

ピラミッドの頂点をきちんと押さえているからこそ、その下の層のエントリーも売れる。われわれは、それを「シャワー効果」と呼んでいる。長い目で見れば、やるかやらないかで売り上げに間違いなく差が出てくる。コンクールでの採用実績も、10年、20年と超長期的なスパンで考えれば、間違いなくブランドの底力になる。

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