「フランスはもうフランスでなくなった…」 ルーヴル盗難事件が映す外国人問題の先行事例《引き返せない地点》のリアル

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
ルーヴル盗難事件
ルーヴル美術館で10月に発生した盗難事件を受けて、フランスでは移民に対する反感が再燃している(写真:ロイター/アフロ)

日本政府は11月4日、外国人政策に関する新たな閣僚会議「外国人の受け入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」の初会合を開いた。来年1月をメドに「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」をまとめる方針だ。

出入国在留管理庁のまとめによると、日本国内の外国人居住者数は395万人と過去最高を更新中で、全国トップの東京都では77万人を超えている(6月末時点)。こうした状況から、移民排斥派は「今のうちに手を打たなければフランスのようになる」と警告を発している。

日本の総人口に対する外国人居住者の割合は3%程度。フランスの770万人(総人口の11.3%)と比べると、絶対数も総人口に対する比率も低い。そのフランスに住んで30年以上、欧州各地を取材してきた者として、ヨーロッパの移民問題はどのような変遷を経て、現状がどうなっているのか、現地の声を紹介したい。

ルーヴル盗難事件がフランスにもたらした衝撃の大きさ

今年10月にフランスのルーヴル美術館から総額約8800万ユーロ(約156億円)相当の宝石8点が盗まれたことは記憶に新しい。その後、捜査当局に最初に身柄を拘束された2人の容疑者は、パリ郊外のセーヌ・サン・ドニの移民地区に住む北アフリカ・アルジェリア移民の男と、アルジェリアに帰国途中のアルジェリア国籍者だった。

当局はこの事件について犯罪組織による犯行ではなく、逮捕・起訴された計4人は同じ移民貧困地区に暮らす移民系の人物で、軽犯罪常習犯の犯行との見方を強めている。プロではない移民系のギャンググループがルーヴルを狙うという大胆な犯行に及んだことは、この国における移民問題の深刻さを浮き彫りにした。

盗難の被害にあったのは、フランスが誇りとする19世紀のナポレオン1世や同3世が彼らの妻に送った品々だった。ティアラやネックレスをバラバラにして売却すれば、歴史的遺産は永遠に消える。なおかつ、フランス人の誇りなど意に介さない若いアラブ系移民がいとも簡単に盗んだという事実は衝撃的だ。

次ページ“移民大国”フランスのこれまで
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事