「フランスはもうフランスでなくなった…」 ルーヴル盗難事件が映す外国人問題の先行事例《引き返せない地点》のリアル
ほかのヨーロッパ主要国でも移民問題は頭が痛い問題であり、経済とも結びつき、政治問題化している。そのため、短絡的なポピュリズムが台頭し、政治危機につながっている。
04年のEUの東方拡大で、イギリスは移動の自由の権利の保障を根拠に、中・東欧移民を無制限に受け入れた。だが、当初の予測をはるかに超えた数十万人のポーランド人労働者らが流入し、需要を超える外国人労働者の急増で混乱が起き、結果的にEU離脱(ブレグジット)につながった。
イギリスでは近年、地方選挙で政権奪取を掲げる反移民の右派「リフォームUK」が、トランプ氏の路線を模倣して大躍進。与党・労働党を脅かし、最大野党・保守党からも票を奪っている。かつてのイギリスは白人人口比率が8割強と高く、移民にも寛大だったが、大きく変わろうとしている。
ドイツでも、ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が一部地域で最大勢力になったほか、15年にアンゲラ・メルケル政権(当時)がシリア難民100万人を受け入れた反動から、移民政策が厳格化されている。
イタリアは、北アフリカから地中海を渡って流入する不法移民の最前戦で、人道支援や救助活動が限界に達している。増加するイスラム系移民に対する危機感から、モスク、イスラムの服装、資金の透明性の3点について規制強化が試みられるなど、右派のジョルジャ・メローニ政権は外国人政策を厳格化させている。
フランスで始まった「精神の原点回帰」
現時点で言えるのは、移民と経済活動の共有を優先すれば文化や価値観の対立は徐々に解消するというのは誤りであり、政府にできることはルールの徹底と法の行使による治安維持くらいしかない、ということだ。
フランスでは今年、キリスト教の復活祭の日に前年比45%増となる1万7800人もの成人洗礼者を記録した。イスラム勢力が脅威となる中、「精神の原点回帰」が始まったとみられている。
ヨーロッパのような誰にでも当てはまる普遍的世界観や制度が存在しない日本では、その曖昧さが外国人の滞在を容易にし、同化は促進されていない。ルールの徹底・浸透を求めようにも、道徳的な側面が強く、普及は難しい。移民問題が深刻化しているフランス以上に、問題解決のためのハードルは高いといわざるをえない。
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