「サザエさんの年金」ってどうだったんだろう?/戦後に激変した性別の役割、家族のあり方、働き方と年金の現在地

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東京・世田谷に長谷川町子生誕100年を記念して開館した「長谷川町子記念館」(写真:時事)

授業で学生たちに「ChatGPTやGeminiに、サザエさんに登場する女性で働いている人は誰がいますか、と尋ねてご覧」と言うと、みんなスマホに、サクッと問うていた。

「誰かいるかい?」と聞くと、みんな、首を横に振る。「中には花沢さんが働いていると答えるのもあるだろう」と言うと、何人かは、うんと頷く。

日本人の多くは知っているように、花沢さんは小学5年生のカツオの友だちで、お父さんの花沢不動産を時々手伝っている。サザエさんに登場する女性で働いているのは、花沢花子さんくらいである。

サザエさんの時代、「高齢者」も「就業者」も少なかった

年金などの社会保障ではよく「大勢の現役世代が1人の高齢者を支える御神輿型から、1人が1人を支える肩車型になる」と言われるが、実際には就業者1人が支える非就業者の比率は戦後ほぼ変わらず、1対1の肩車型に近く、将来もあまり変わらない。

これはデータでも裏付けられているのだが、それを肌感覚で知ってもらうためには、サザエさんは格好の教材になる。

サザエさんやフネさん達は、非就業者であって就業者ではない。だから、昔からこの国では、高齢者をお神輿型で支えていたことなどない。戦後を通じておおむね就業者:非就業者=1:1の肩車型に近かったのだ。それでもこの間、生産性の向上のおかげで、生活水準は向上した(『「人口減少」を悲観しすぎると、知恵が止まってしまう』)。

「御神輿型から騎馬戦型、そして肩車型になる日本の社会保障は持つはずがない」という話は、かつて経済学者ガルブレイスが「通念」と呼んだ、「社会で人気があり、広く受け入れられているが、必ずしも事実を反映していない概念」の代表例であると言える(社会保障をめぐる通念は『読売新聞』2025年10月26日付)を参照)。

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