急浮上する原潜保有論・その実現可能性は(後編)/建造能力、母港決定・地上施設の建設、社会の容認…保有までにハードルが高くそびえる

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1987年9月、青森県・大湊港を離岸する原子力船「むつ」。日本の技術で原潜用の原子炉は製造できるのか(写真:時事)

(本記事は「急浮上する原潜保有論・その実現可能性は(前編)」の続きです)

日本は原子力潜水艦を導入すべきなのか。その有用性については前編で述べた。原潜は海上自衛隊が直面している問題を解決する。そのような現実的利益から防衛省や海自は肯定的態度を示している。

ただ、実際に導入に進むかは別である。そこには「技術的に実現できるか」という問題と、「社会が許容するか」の問題があるためだ。

原子炉を建造できる技術力を持っているのか

はたして、日本は原潜を建造できるのだろうか。そこには障害がある。最初の問題は、潜水艦用の実用原子炉を入手できるかだ。

原潜用の原子炉はいくつもの相反する性質を兼ね備える必要がある。1つは、小型で作らなければならない。少なくとも潜水艦の直径10m以内に収める必要がある。そのためには加圧水型原子炉が必要となるが、この原子炉は日本では設計した経験はない。

2つ目に、大出力も求められる。1万馬力以上が目安となる。ちなみに、今のアメリカ原潜は3万馬力以上であり、初期の原潜でも1万5000馬力あった。

3つ目に、良好な操縦性も求められる。原子炉の出力は潜水艦の速力に応じて増減する必要がある。つまりは100馬力台から数万馬力の変化に対応できなければならない。その増減もある程度の短時間で完了しなければならない。長くとも10分程度である。そして、一度その出力に落ち着いた後に、変化しない安定性も求められる。

4つ目に、安全性は必須となる。破損や放射能漏れは許されない。放射線も完全に遮蔽する必要がある。潜水艦乗員は原子炉から10m、20mの距離に居住している。

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