急浮上する原潜保有論・その実現可能性は(後編)/建造能力、母港決定・地上施設の建設、社会の容認…保有までにハードルが高くそびえる

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それほどの国費を投じて原潜を作るべきなのか。それよりも教育や社会保障に予算を投じた方がよいのではないか。それは必ず議論となる。

軍事的に引き合うかの検討もある。南シナ海での潜水艦作戦はディーゼル・電池式の潜水艦でもできないことはないからだ。問題解決についても、代替案はないわけではない。例えば南シナ海やインド洋に出入りする際に乗員を交代させる。飛行艇や高速船で廻航組と作戦組を入れ替えるやりかたもある。

原潜建造・保有が防衛費に大きなしわ寄せも

原潜以外を作れなくなる問題もある。防衛費や、そのうちの海自向けにあたる予算額の相当部分を使う形になるからだ。

なによりも艦隊戦力への悪影響は避けられない。護衛艦や掃海艇といった水上戦力、対潜哨戒機や艦載ヘリといった航空機部隊の縮小は避けられない。さらには潜水艦の数も減る。実態としては原潜だけの海軍となる。

イギリス海軍はその状態にある。今では核ミサイル搭載型原潜4隻と、魚雷で戦う攻撃型原潜6隻、原潜ではないが空母2隻の建造維持で予算が尽きてしまっている。そのため数が必要な駆逐艦とフリゲートは13隻しかない。将棋で言えば、飛車と角を揃えた結果、歩が足りない事態に陥っている。海自にしても、その事態を許容するかは問題となるのだ。

そのうえで、自治体が原潜や関連施設を受け入れるかの問題もある。

世論が原潜導入を認めても、地元に置くとなれば別の話だ。母港とする、試験用や実習用の原子炉を置く、炉心交換や解体を実施する、廃棄物を保管する。そのような話が出れば、現地住民は原潜導入には賛成でも地元配置には反対となる。総論賛成、各論反対である。

実際に、母港として受け入れる軍港は見つからないだろう。おそらくは横須賀も反対する。すでにアメリカ海軍の原子力艦の母港でもある。ただ、日本製となると首はタテに振らない。

原子力艦に関してはアメリカには信用がある。日本初寄港から60年以上が経つが、危険事故は起きていない。原子炉の維持や保安も厳正にしている。しかも、日本の組織とは違い事故発生時への備えも徹底している。廃艦処理もアメリカ本土での実施となる。

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