
本来あるべきものが、なくなるのは不思議である。
もし、組合の収支報告が突然なくなればどう思うだろうか。設立からの30年間、収支の発表を律儀に続けていた。募金の使い道も毎回掲示していた。それが今年になって突然なくなったとなればどうか――。
やましいことがある、と考えるだろう。使い込んだか、別用途に使ったか、金銭事故を隠しているかを疑う。これは同業組合も労働組合も同じである。
『防衛白書』から消えた陸海空の予算配分比
2022年度以降の『防衛白書』も、その状態にある。これまで白書は陸海空の予算配分比を掲載してきた。それをしなければ陸海空自衛隊それぞれが、いくらずつ使っているのかがわからない。予算書を読んでも予算項目の関係からわからないからである。
それが、防衛予算増額の年に突然消滅した。2021年版までは「防衛関係費(当初予算の内訳)」として「経費別支出」「使途別支出」、そして陸海空配分比を示す「機関別支出」を提示していた。それが2022年度版で突然なくなり、以降そのままとなる。
なぜ、白書から陸海空配分比の項目を消したのか。
陸自予算の増額を隠すためである。政府は2022年には防衛費増額を決めたが、それは陸自予算をも増額する内容であった。金額ベースでは海空自衛隊の増額幅を超えている。それを隠すために配分比を消したのである。
これは防衛予算増額にある、いかがわしさも示している。まず、防衛予算増額の不健全を隠すことが目的だからだ。政府は防衛予算の増額を進めている。2023年度からの5年間で従来額の約2倍まで引き上げる予定としている。
理由は中国の脅威増大と、その対策としての海空戦力増強である。仮想敵国である中国は海空戦力の強化を続けている。このままでは海空自衛隊は絶対的な劣勢に陥ってしまう。それを避けるために防衛費を増額して、軍艦や戦闘機を強化する。そう説明している。
しかし、実態は異なっている。中国対策とならない陸上戦力への投資も増やしているからだ。増額幅は海空自衛隊向けよりも大きい。
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