当然ながら背景も突かれる。誰もが「陸自の組織防衛、権益保護ではないか」とみる内容である。実際に陸自が政治力を行使してきた事実がある以上、払拭は難しい。
その際には与党からも攻撃される。野党やマスコミから批判されるだけではない。自民党の国防族以外が、国防族でも陸自関係議員以外は矛先を向けてくる。
実際に2024年、川崎重工業が海自から請け負った潜水艦の修理や検査の際、下請け企業に架空の業務を発注して裏金をつくり、潜水艦乗組員にその金で飲食・物品を提供していたという不正事件が起きたが、これには自民党も政府批判に加わった。乗員の不正利得や川崎重工業の工数水増し、潜水手当の不正請求といった改竄や虚偽報告となると許容はできない。
「追及」を極度に恐れる防衛省
国政調査権の行使はその象徴である。与野党ほかの全会一致が前提だが、潜水艦不正ではついに行使に至り、関連する調達資料の提出となった。自民党もまた批判に加わったのだ。
だから、防衛省は陸海空配分比を隠すのである。防衛費増額の内実を突かれると危ういことを承知している。そのような攻撃の足がかりとなりうる材料を隠そうとしている。陸海空自衛隊への防衛費配分比はその1つである。
そして、その形跡を「後年度負担」で隠した。以前の「防衛関係費」の項目は「経費別支出、使途別支出、機関別支出」の3つでできていた。そのうちから陸海空配分比を示す「機関別支出」だけを抜くと目立つ。だから、後年度負担を示す「経費別支出」のグラフを独立させて、従来のままで残した「使途別支出」との2つの図表に分けた。

これもまた、陸海空配分比の隠匿を重視を示しているものだ。「取るに足らない弱点を見えやすい場所に置くことで、本当の弱点を隠す」テクニックだからだ。
後年度負担は目につきやすいが防御は容易である。「兵器のツケ買い」「将来に負担を残す」ことから注目を浴びやすく、よく批判されている。ただ、予算技術的な問題なので言い訳は容易だ。「支払は完成品との引き換えが原則である。ただ、兵器の製造には5年かかる。だから、5年後の支出になる」で終わる。
防衛省からすれば、配分比はそれほどまでして隠したい内容なのである。
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