趣旨違いも甚だしいということだ。国民や国会に向けた防衛費増額の説明と、実際の防衛費支出は全然合っていない。そういってよい。だから配分比の項目を抹消したのである。
次に、権益保護の目的を隠すためだからでもある。防衛費増額は陸自をはじめとする既存権益の保護策でもある。その不純に気づかれたくない。これも配分比の発表をやめた理由である。
なぜ、政府・防衛省は陸自向け予算も増額したのだろうか。今の中国との対峙には陸上戦力は役に立たない。それにもかかわらず従来以上の予算額とした。それはなぜか。
対中国抑止に役立たずでも増額
陸自権益を保護するためである。
本来なら、中国対策は海空自衛隊への傾斜配分でよい。中国の脅威とは中国海空戦力の脅威である。それへの対抗策も日本の海空戦力増強だからだ。
実際にそれが合理的選択となる。今までの防衛費5兆円でも海空戦力は1.5倍にできる。陸自向け予算を1.8兆円から半分の9000億円に減らす。その9000億円を海空自衛隊に半分ずつ分ければ、海空の予算規模は1兆から1.45兆円に増やせる。
そうすれば国民経済への負担は生じない。すでに日本では、こども食堂が出現・常態化するほど生活状況は悪化している。安全保障よりも社会保障が優先すべき事態である。防衛費増額どころではない。
予算の効率的使用の観点からしても正当である。同じ防衛費なら強力な防衛力を、同じ防衛力なら安価な防衛費を追求しなければならない。
それにもかかわらず、政府・防衛省は防衛費全体を増額する選択をした。
陸自に迎合した結果だ。政治力を持つ陸自を抑えきれず、その権益に配慮して傾斜配分方式をあきらめさせたのだ。
傾斜配分は陸自の利益と衝突する。陸自の隊員数が、師団以下の部隊数が、そしてなによりも大事な将官や連隊長のポストが減る事態だからである。そのため陸自は対抗策を講じてきた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら