防衛省が「陸自権益」を隠さなければならない理由、防衛費増額は陸自偏重、本当に必要な海空自に回らない政治力の強さ

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なお、防衛費増額は同時に防衛産業の権益保護でもある。とくに官需なしでは生きていけない航空産業への配慮だ。今の企業規模を維持するには新戦闘機GCAP(Global Combat Air Programme)の開発継続は必須だ。その巨額の開発費支出を今後維持するために防衛費を増額した側面もある。

防衛産業の政治力はいうまでもない。各企業が自衛隊OBを顧問に迎えるのも、与党に献金するのもそのためである。また、政治力行使の実績もいうまでもない。予算折衝で財務省にダメ出しされた高額兵器が大臣折衝で復活に成功する背景である。

安保3文書の虚構

安保3文書(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)も、その1つである。実際は防衛省の買い物リストでしかない。防衛産業が政府に求める兵器調達の計画を出発点として、そこから計画を逆算し、さらにその計画を必要とする脅威判断を逆算して作り出した文書でしかない。

真面目に取り合う代物ではない。それらしい専門用語を駆使して防衛力増強の必要性を説いているのはだましでしかない。原子力発電所の維持を前提に、電力コストを逆算する経産省の将来エネルギー構想と同じである。

さらに、追及されることを回避したいからだ。上記1つ目、2つ目で挙げた問題点を国会や新聞に追及されるのを避けたい。そのために攻撃材料となりうる陸海空自衛隊の配分比を隠したのだ。

では、防衛省が一番恐れている事態とはなにか。説明がつかないことである。政策、判断、支出以下について合理的に説明できない事態を病的に恐れる。とくに大臣や首相が国会や記者会見で回答に窮し、さらに間違いを認める事態は避けなければならない。防衛官僚はなによりもそう考える。

陸自向け予算の増額は、それを引き起こす原因となりうる。実際に筋が悪すぎる。本来の趣旨である中国脅威への対抗策とはならない。その増額の幅も、主役である海自や空自を超えている。金額も年間1兆円の無駄である。

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