盛り上がりを欠いた自民党総裁選。国民の視線も厳しく、自民の縮小と与野党協働の新局面が浮上する。

自民党総裁選挙は、とくに目立つ候補もなく、クライマックスを欠いたまま終わろうとしている(脱稿は10月1日)。
昨秋の衆議院選挙、今年の東京都議会選挙、直近の参議院選挙と3度の選挙で敗北した石破茂首相を総裁から引きずり下ろしたものの、提示された政策は石破政権と大差ない。総裁選の期間中「解党的出直し」という言葉が躍ったが、実体を伴わないことは容易に想像できた。有力候補の小泉進次郎氏も、父・純一郎氏に倣って「自民党をぶっ壊す」と言おうとはしなかった。
少数与党に転落した自民党からは「反転攻勢」という言葉すら出ないほど、党は静かに縮みつつある。かつての熱狂はそこにはない。
こうした状況の起点は旧安倍派の裏金問題にある。国民の厳しい批判は消費減税など負担軽減を求める声となり、参院選での自民党敗北を決定づけた。
政権構想より「選挙の顔」重視
派閥解消を余儀なくされた自民党はまとまりを失い、議員たちは党の将来より自らの選挙を優先するようになった。石破降ろしは、政権構想より「選挙の顔」を重視する議員多数の動きの象徴だった。
しかし、「選挙の顔」になるかどうかはさておき、誰を総裁に選んでも、少数与党という現実は変わらない。政権運営においては、法案一つ通すにも野党との協議が不可欠だ。
こういう状況では、政権の善しあしは自民党の強弱とは関係がない。野党がどこまで政権にとり受け入れ可能な提案をするかにかかっている。与野党協働が政権のパフォーマンスを決定づける。協議が円滑に進めば法案や予算は成立するが、対立が深まれば国会は容易に停滞し、野党が政権を見限る可能性も出てくる。
そこでまず新政権が頼りにするのは、昨年までの野党との協議を踏まえた経緯である。つまりは石破政権を円滑に継承するかどうかが、新政権が動揺しないための試金石だ。
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