
新自由主義的政策で公共サービスを著しく劣化させたサッチャーと、そのツケの解決に苦しむブレア・労働党政権
イギリスから送る原稿も、今回が最後となった。イギリス滞在のまとめとして、ヨーロッパと日本を比べて感じることを整理してみたい。
前回の原稿を送った直後にイギリスでは総選挙が行われた。結果は、ここで繰り返すまでもないが、この選挙ではイギリス国民の政治意識が絶妙に表現されたと思う。国民は基本的に労働党政権の継続を選んだ。しかし、労働党は50近くも議席を減らし、ブレア首相の威信は大きく低下した。大量破壊兵器をめぐる虚偽の情報を流し国民と議会を欺いて、イラク戦争を始めたブレア首相に対する国民の怒りと不信は持続している。民主政治の下で国民に政治的無力感が広がっているのは、どこの国でもある程度共通した現象である。しかし、選挙は依然として国民が政治家の責任を追及する最大の手段である。ブレアに冷や汗をかかせつつ、労働党政権を選んだイギリス国民の政治的能力には感心した。政治に緊張感を持たせるのは、指導者の言動、行動を記憶し、偽りを許さないという国民の態度にほかならない。
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