まさかの《へずまりゅう》化? 自民党総裁泉の演説会で高市氏が突然「シカ派」へと転じた"ある意味で納得"の理由

9月22日に告示された自民党総裁選挙は、危機に瀕した自民党の“再生”を懸けたものだ。同日、党本部で行われた立会演説会の演壇には、茂木敏充前幹事長、小林鷹之元経済安全保障担当相、林芳正官房長官、高市早苗前経済安全保障担当相と小泉進次郎農林水産相が並んだ。
いずれも1年前の総裁選に出馬した面々で、どうしても前回と比較される。選択的夫婦別姓や雇用規制撤廃を高らかに掲げて批判を受けた小泉氏は、今回はこれらを封印した。茂木氏も前回実施した動画でのイメージアップ作戦では限界があると感じたのか、都内の青果店で野菜を買ったり、こども食堂を訪れて手品を披露するなど、“変化球”を用いている。
昨年の総裁選で「靖国神社参拝」の意向を示した高市氏は、今回の出馬会見では「国策に殉じられた方のご慰霊のあり方、平和の祈念のあり方は、しっかり考えていかないといけないと思っている」などと述べたものの、積極的な発言を避けた。
聴衆の度肝を抜いた大伴家持の歌
高市氏は前回、1回目の投票で議員票72票・党員票109票の計181票を獲得し、2位の石破茂首相を大きく引き離した。だが、決選投票で議員票が173票と伸びず、議員票を46票から189票と大きく増やした石破首相に敗退した。そうした悔しさから、今回は慎重を期したものと思われた。
しかも、自民党から岩盤保守層が離反している。同党は昨年10月の衆院選で前回と比べて小選挙区で675万8395票、比例区で533万2193票を失った。今年7月の参院選では、選挙区で613万3283票、比例区で544万7939票も減らした。
こうした票は、衆参選挙で議席を4倍にした国民民主党や、参院選で改選議席1議席から14議席に躍進した参政党に流れたとみられる。とりわけ「日本人ファースト」のキャッチフレーズを掲げた参政党は、自民党政治に不満を抱く保守層と親和性がある。
それを意識したのか、高市氏は22日に党本部で開かれた立会演説会でいきなり「奈良公園のシカ問題」を取り上げた。万葉集に収められている歌人・大伴家持の歌「高円の秋野の上の朝霧に妻呼ぶ雄鹿出で立つらむか」を高らかにうたい上げ、聴衆の度肝を抜いた。
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