
自動車部品メーカー、ファースト・ブランズの先月の経営破綻は、通常なら世界の金融市場の目を引きつけるような出来事ではなかった。
ポンプやフィルターなど、オートゾーンやウォルマートといった小売店で売られている自動車用交換部品の中堅メーカーである同社は近年、事業を急速に拡大しており、成長ペースが速すぎると見られていた。
しかし、そのファースト・ブランズは今、躍進の燃料になっていた融資と、債権者の一部が指摘する破綻前の疑わしい会計処理をめぐり、ウォール街をはじめとする世界の金融市場で混乱の渦の中心となっている。
ウォール街の有名どころが次々と…
国際金融で有名ないくつかの企業もファースト・ブランズ破綻の余波に巻き込まれ、損失、責任の押し付け合い、危険の兆候を見逃したことによる面目の失墜といった影響を複合的に受けている。
そうした企業の中には、ファースト・ブランズの資金調達の多くを手配したニューヨークの投資銀行ジェフリーズ、大量の資金を提供したスイスの銀行UBS、そして仲介業者経由で同社に資金を流し込んでいたブラックロックが含まれる。
テキサス州の連邦破産裁判所に提出された書類や、今後の処置に関する交渉の関係者によると、損失総額は数十億ドルに上ると見られている。
ある債権者の代理人は、裁判所に提出した書類の中で、23億ドル(約3500億円)もの資産が「単純に消えていた」と述べている。
だが、多くの金融関係者を不安に陥れている理由は、潜在的な損失の総額だけではない。ファースト・ブランズへの融資資金の多くは、緩い規制で活況を呈しているプライベートクレジット(シャドーバンキングの一種)によるものだったからだ。