急浮上する原潜保有論・その実現可能性は(後編)/建造能力、母港決定・地上施設の建設、社会の容認…保有までにハードルが高くそびえる

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5つ目に、燃料寿命も長くしなければならない。原潜の燃料交換は極めて厄介だからだ。一度船体を輪切りにして原子炉区画だけを取り出し、交換後には再び前後をつなぐ工事となる。その回数は少ない方がよい。可能ならば廃艦までの30年間で交換なしにしたい。

これらは性質的に矛盾する。小型化は、大出力、操縦性、安全性、燃料寿命のすべてと相反する。大出力、操縦性、安全性も互いに相反する。そもそも良好な操縦性の中にある出力の増減幅と増減時間、出力安定性の鼎立も容易ではない。

それを日本の原子力産業が実現できるか。アメリカが高性能炉を製造できるのは、経験を積んだ結果である。世界最初の原子炉を作り、「ノーチラス」号以来70年にわたり原潜や原子力空母を建造してきた。日本にはその経験がない。

なお、国産マイクロ原子炉も使えない。一部には転用で原潜が作れるといった話がある。ただ、小型だが出力は400馬力程度しかない。おそらくだが、それも固定出力である。なによりも検討段階であり現物は存在していない。

実用型の原潜を作れるか

さらに、実用型の原潜を建造できるかという問題がある。仮に、アメリカ製と同水準の原子炉入手に成功したとしよう。その場合でも満足な潜水艦が作れるとは限らない。国産旅客機開発では、傑作エンジンを手に入れても世界市場に出せる機体は作れなかった。それと同じである。

もちろん、日本には潜水艦を設計し建造する能力がある。性能で劣る部分はあるとは言われているものの、おおむね世界一流の水準にある。根本部分に関しても独自に研究開発できる。ノウハウの一段階上にあたる「なぜ、そのように作らなければならないのか」のノウ・ホワイの知見もある。

ただ、原潜の建造経験はない。原子力型に固有のノウハウは持っていない。そのために、とくに騒音問題でつまずく可能性が高い。原潜のエンジンは原子炉と蒸気タービンの組み合わせである。従来のディーゼル・電気モーター方式とは根本的に異なっている。そのため、今までの騒音対策では通用しない部分が出てくる。

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